開催の趣旨について
本大会は、ASDや関連する発達上の課題に対する治療、すなわち応用行動分析学(以下、ABA)や 当事者主体の支援のベストプラクティススタンダードを取り上げた日本初の国際大会で、臨床、教育、法律の各分野における世界の専門家が一堂に会し、2025年9月5日~7日に北海道函館市で開催される予定です。このプロジェクトは、米国などで開発され実証された効果的で思いやりのある科学的な治療モデルや、自閉症スペクトラム/ASDという世界共通の課題への取り組みを通じて、ASDの子供や大人に、生活改善や成長への希望を与え、彼らがあり得る最高の存在になることを目指すものであり、日本の保護者、教育者、医療専門家と、世界の自閉症専門家やアドボケイトの方々との直接の交流とネットワーキングの機会を創出するための第一歩です。
自閉症の発症率は最近の調査では38人に一人とも言われ、男性は女性の4倍の発症率があります。しかし、我が国では根拠に基づく治療法や教育・支援方法が普及していません。我が国における特別支援教育や社会的インクルージョン、そして障害児者へのスティグマと尊厳の欠如の問題は国連でも指摘されており、我が国での早急な対応が求められています。一方で米国疾病管理局や国連でも認識されている自閉症の治療方法は医学的に北米を中心に認められたABAを中心とした総合的なアプローチであり、近年、我が国でも少なからぬASD研究者や臨床家が、確立された国際的な資格を求めることに強い関心を示していますが、現在まで国家レベルでの政策的な検討はなされず、治療や支援に関して一般市民においては正しい知識の普及も自治体により大きな差があります。
当法人(一社)アジアパシフィックABAネットワークは、2021年より日本で初めて[1]、QABA[2]公認カリキュラムなど、ANSI[3]公認の米国発祥の国際的モデルである専門家育成カリキュラムを提供してきています。障害のあるお子さんや成人のための「居場所造り」とは、物理的な条件だけでなく、支援者や臨床家、親御さんも含めた人的環境を整えることが必須と考えられます。それはカナダやアメリカ、オーストラリアやイギリスなどのインクルーシブモデルを検証すると明らかであるため、当事業はまさに「障害児者の居場所造り」を成功させ持続させるための解決策として「根拠に基づく質の高い支援者の育成」(の場作り)を目標とします。
1 ^ 実は、当団体の最初の母体は、2014年に、米国に本部を置く別のABA専門家の認定団体であるBACBが、日本初の認定行動分析士(通称BCBA)の教育プログラムを提供するために設立されたのが始まりです。 https://www.bacb.com/ BACBが非英語圏から撤退した後、QABAの認定コースワークの提供を開始しました。https://qababoard.com/
2 ^ QABAとはQualified Applied Behavior Analysis Credentialing Boardの頭文字をとったもの、次を参照のことhttps://qababoard.com/。
3 ^ ANSI(アンシー)とは、American National Standards Instituteの略で、米国規格協会を指します。アメリカの工業製品の規格化や標準化を行っている非営利団体で、日本のJAS(日本工業規格)に相当します。